日本でも若者を中心に多くの支持を集めているヒップホップですが、発祥の地はアメリカです。1970年代にニューヨークのサウス・ブロンクス地区で生まれたヒップホップは、ファンクやソウルをかけるDJ、DJが流す音楽で踊るブレイクダンサー、音楽に乗せてラップするMC、彼らが壁などに描くグラフィティーといった要素によって構成されました。
ヒップホップは単なる音楽の一ジャンルではなく、ダンスやグラフィティー、ストリートカジュアルファッション等も含めたカルチャーとして捉えることができます。ここでは、ファッションの側面にフォーカスをあててヒップホップの歴史を振り返ってみましょう。
ヒップホップファッション歴史概要
ヒップホップファッションは、1970年代のアメリカ合衆国のブロンクス地区で始まった若者たちによるストリートカルチャーの一つである。その特徴は、ラップやDJをはじめとするヒップホップ音楽とともに、アウターウェア、スニーカー、アクセサリーなどの洋服や小物に現れる。
1970年代初頭には、ブロンクス地区の若者たちは、既製品に手が届かないほど高価なブランドの洋服を自作し、オリジナリティのあるファッションを楽しんでいた。その後、1980年代に入り、ストリートカルチャーが全国的な現象になると、ヒップホップファッションはさらに発展した。
この時期、AdidasやPuma、Nikeなどのスニーカーブランドが、ヒップホップカルチャーとともに急速に成長し、スニーカーは、ヒップホップファッションに欠かせないアイテムとなった。また、トラックスーツやバンダナ、ベースボールキャップ、ゴールドチェーン、フード付きのパーカーなどが、ヒップホップファッションの代表的なアイテムとなった。
1990年代に入ると、ブランド物の洋服やアクセサリーが主流となり、スポーツウェアとストリートファッションが融合したヒップホップファッションが広まった。この時期には、トミー・ヒルフィガーやフェイラー、ナイキ、カルバン・クラインなどが、ヒップホップファッションの代表的なブランドとなった。
2000年代に入ると、ヒップホップファッションはますます多様化し、個性的なファッションスタイルが増えた。アイスバーグやヴィヴィアン・ウエストウッドなどの高級ブランドがヒップホップファッションに参入し、ファッションショーでストリートカルチャーを取り入れるようになった。
80年代のゴールドアクセ、90年代のオーバーサイズ
ヒップホップが誕生した当初の70年代後半は、レザーやハイウエストのデニムが人気でした。
80年代に入ると、ヒップホップは一気にメジャー化していきます。この時代を象徴するファッションアイテムと言えば、ジャラジャラと太く大きなゴールドアクセサリーです。トラックスーツやボンバージャケット、大きなメガネ、バゲットハット等を組み合わせた、オールドスクールと呼ばれるスタイルが印象的です。
90年代に入ると、ブランドロゴが大きく入ったオーバーサイズのアイテムが流行しました。スポーツ系ブランドやNBA・NLBなどのジャージで、XXLなど極端に大きなサイズを選ぶのがこの時代の代表的な着こなしです。同時にアメリカ西海岸では、チェック柄のシャツにキャップといったギャングファッションが人気となりました。
すでに20〜30年も前のスタイルになりますが、ここ最近リバイバルブームになったアイテムもいくつか含まれていることに気づいたでしょうか?当時のヒップホップのMVを見ると、ここ最近のストリートカジュアルに似た着こなしも多いことがわかります。
スニーカーの流行、ブリンブリンと呼ばれるようなゴージャスなアクセサリーもこの時代のヒップホップファッションを語る上で外せない要素です。
一般的に、ヒップホップファッションというとゴールドアクセやオーバーサイズといった80〜90年代のスタイルをイメージする方が多いのではないでしょうか。
シンプルに転じた2000年代、ハイブランドと密接化した2010年代
2000年代に入ってからもヒップホップの世界ではビッグシルエットの流行がしばらく続きましたが、2000年代後半になると一転して体にフィットしたスタイルが好まれるようになっていきます。同時に、ゴージャスさよりもスタイリッシュで洗練された雰囲気を感じさせるヒップホップアーティストも出始めました。
顔や頭まで含めた全身のタトゥー、歯に装着するゴールドやプラチナのグリルといった、衣服以外の要素が流行したのがこの時代の特徴のひとつです。
2010年代は、よりシンプルでシックなスタイルにシフトしていきます。人気アーティストがハイファッションブランドとコラボレーションすることも増え、その影響でストリートの若者たちにもハイブランドの人気が高まっていきました。
2020年を迎えた現在、ヒップホップファッションはハイエンドからローエンドまでさまざまなブランドのアイテムを自由に取り入れ、スケーターやパンク・ゴスといった他のジャンルもミックスしながらより多彩に発展しています。典型的なヒップホップファッションアイテムの再流行もあり、目まぐるしく変化する時代に合わせてトレンドのサイクルも早くなっているようです。
ファッションだけでなく音楽にも言えることですが、あるジャンルは常に関連する他のジャンルと影響を与え合いながら発展していきます。これからも、ヒップホップ音楽の変化に伴いファッションもさまざまな変化を見せていくことでしょう。